『青葉』
夏はわりと健康でして、
そのため 「夏」曲は いくつかあります
なかでも、ハープを生かした、という意味では 忘れ得ぬ一曲
「青葉」
青葉という言葉が好きです。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という、江戸時代の俳人・山口素堂の句で最初に覚えたんだと思います。
初夏の風物詩を詠んだこの句を、この曲の「私」は思い出しているようです。
自作曲です。青葉のころを越えて旅立つ「私」の回想。
発表したときにnoteに書いたコメント。
この句は「目には青葉」が正確といわれてい(るはずでし)て、語呂がよくなかったので「目に青葉」を採用しました。不正確な引用。
オケを先に作ってハープを後から録りました。ハープがなかなか合いませんでした。
時々入るざわーっとした音は、実際に録音した木々のざわめきの音です。
ミクさんがかなりはまってくれてうれしかったなー
ハープは その清らかで爽やかな音色が、初夏の風を思わせます。
曲調もさわやかなので すーっと聴ける、と思います。
すーっと 聴けてしまう。
「明るい風景を描写した曲に、暗い心情の歌詞は合わないでしょう」
こう仰ったのは大学の先生だったか、ハープの先生だったか、どなたか忘れてしまいましたが、わたしはこの言葉がずっと、ひっかかっています。
知りうるかぎり、明るい風景は、つねに明るい心と共にはありませんでした。泣いて帰った日に見上げた空は青く澄んでいたし、緑がぎらぎらと揺れる夏も、金色の稲穂が揺れる秋も、つらかったし悲しかったし、別れもありました。心が陰る日、街はその活気で私を刺すように輝いていました。
「青葉」の主人公は 街に住んでいます。あの子、だって、います。
それでも 去るのです。
旅に出るのに良い季節、
あなたはどこからどこへ、そしてわたしはどこからどこへ ゆきましょうか。
「青葉」
作詞作曲/市井ヒロノ
坂を下りきれば駅への道。
スーツケースは秘密の分だけ重い。すれ違った自転車は勝ち気なあの子みたいで。
雨宿りの軒を通り過ぎる。
錆び付いた看板、煙草の抜け殻。
あの子にも言わずに、西日の中をゆく。
ものを知るたびに、街の色は薄れていった。
けれど、光が差して、眩さに見上げれば、
“目に青葉、”
私、この街に住んで
見渡した景色、世界の全てと、思ってた。
坂を下りきって駅への道。
振り返ると影が後ろ髪引かれてる。
さよならの他に言うことなんて無いはずなのに。
“目に青葉、”
私、この街の夏を、思い出すかな。
きっとどこかで。
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